お金がなくても年金を捨てないで!免除制度と学生納付特例で守れる将来

年金制度のイメージ画像 年金

はじめに ― 年金制度に不満を持つあなたへ

年金制度への不信感や批判は珍しくありません。特に自営業や学生、子育て中の家庭にとって、毎月の国民年金保険料は大きな負担です。しかし、「未納」と「免除・猶予」は全く異なります。免除や猶予を使えば、将来の年金受給資格や障害年金・遺族年金の受給資格を維持できます。本記事では、免除制度と学生納付特例の仕組みやメリット・デメリット、注意点をわかりやすく解説します。
※解説は単純にわかりやすくしたものなので、複雑でもよいから詳しく知りたい方は厚生労働省のホームページをご覧ください。

解説の前に抑えておくべきポイントがあります。
①年金を受給するには ” 期間 ”が必要です。まずこれをクリアすることが第一段階です。期間が足りないと年金はもらえません。この”期間”は免除や学生納付特例で作ることができます。
②次に ” 受給額 ”です。全額免除以外は基本的に支払わないと増えません。
勘違いされがちですが、65歳からもらう金額が低くても良ければ全額免除の審査を通過し続ければ、①の期間だけはクリアしますし少しだけ年金ももらえます。
” 期間 ”をクリアすることと” 受給額 ”を増やすことは違うので勘違いしないように注意が必要です。

国民年金免除制度とは※(制度の基本解説)

※免除制度とは?(国民年金保険料の免除制度の概要)

免除制度とは、収入や生活状況に応じて国民年金保険料の支払いを全額または一部免除できる仕組みです。
具体的には、以下の4種類があります。

  • 全額免除
  • 4分の3免除
  • 半額免除
  • 4分の1免除

前年の所得に応じて審査が行われ、申請は市区町村役場や年金事務所で手続きが必要です。
※所得審査の対象となるのは、本人・世帯主・配偶者です。

📌 参考:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度」
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/


※多段階免除制度が導入された背景

実は、この多段階の免除制度には私自身も関わった経緯があります。
私が厚生労働省に在籍していた当時(平成初期頃)、免除と呼べる制度は 「全額免除」「学生納付特例」 のみでした。

しかし、当時すでに国民年金保険料は月額13,300円(現在は16,000円超)に達しており、将来さらに保険料が上昇することは容易に予測できました。

そのため私は「一律の免除だけでは不十分であり、収入に応じて段階的に負担を調整できる仕組みが必要だ」と考え、多段階の免除制度(4分の3免除・半額免除・4分の1免除)の草案を長官に提出しました。

結果として、制度は複雑化してしまった面もありますが、
「収入状況に合わせて少しでも納めやすい形をつくり、できるだけ多くの人に年金制度へ参加してほしい」という思いから生まれたものです。

免除制度のメリット

  • 年金受給資格期間に算入される
  • 障害基礎年金・遺族基礎年金の納付要件を満たす(免除期間は納付済み扱い)
  • 追納(免除されて払わなくても良くなった部分を払う)することで将来の年金額を少しずつ回復できる

免除制度のデメリットと注意点

  • 追納しない場合は免除の期間の将来の年金額が減額される
  • 追納(免除されて払わなくてよくなった部分を払う時)の金額は2年を過ぎたころから高くなるため払うなら早い方が良い
  • 所得審査や申請手続きが必要
  • 審査に通らない場合がある
  • 4分の3免除は残りの4分の1を、半額免除は残りの半分を、4分の1免除は残りの4分の3を払わないと未納と同じ扱いになる

学生納付特例制度とは※(学生専用の猶予制度)

※学生納付特例制度は、20歳以上の学生が在学中に保険料の納付を猶予できる制度です。
※所得審査の対象となるのは、本人・配偶者のみで、世帯主の所得は審査対象になりません。
※継続はされないので申請は毎年必要です!

学生納付特例のメリット

  • 学生納付特例の期間は保険料を支払わなくても年金を受給するための資格期間にだけ算入される(※保険料を払わないともらえる年金額には反映されない
  • 障害基礎年金・遺族基礎年金の納付要件を満たす(猶予期間も納付済み扱い)
  • 卒業後に追納可能(10年以内)

学生納付特例のデメリット

  • 学生納付特例の期間は払わないと将来の年金額に反映されない
  • 追納(払わなくてよくなった部分を払う時)の金額は2年を過ぎたころから高くなるため払うなら早い方が良い
  • 毎年度手続きが必要で、手続き忘れで未納になるとその部分は期間も金額も反映されない
  • 追納期限を過ぎると回復不可

制度利用の落とし穴 ― 自動更新はあてにしない!

学生納付特例は毎年度更新が必要です。申請を忘れると、その年は未納としてカウントされ、障害年金や遺族年金の納付要件にも算入されず、将来の年金額にも反映されません。
筆者も20歳当時、更新を知らずに1年間未納扱いとなり気づいたのは5年後で納付できる期限も過ぎてしまっていた経験があります。

国民年金免除制度の継続申請も注意が必要です。免除の継続申請制度があっても、審査に通らなければ未納になります。一度でも通らなければ、再申請が必要です。安全策は必ず毎年申請すること。自動継続や自動更新に頼らず、申請期間を確認し、メモや控えを保管しましょう。

注意点

  • 自動継続や自動更新は過信しない:必ず自分で毎年申請を確認する
  • 申請期間の把握:役所や年金事務所で開始日・締切日を確認
  • 証拠を残す:申請書の控えや受領印を保管
  • 未納1年の損失:保険料約20万円分が未納になると、将来の年金が年間約20,000円減額。10年間で約20万円分の損失(※2025年度水準)

免除・猶予と未納の決定的な違い

免除・猶予

  1. 受給資格期間にカウントされる
  2. 障害年金・遺族年金の受給条件を満たす
  3. 将来の年金額減は追納で補える

未納

  1. 受給資格期間に算入されない
  2. 障害年金・遺族年金の受給資格を失う可能性がある
  3. 将来の年金額がゼロになるリスク

未納はリスクが多くあります。同じ払えないにしても毎年申請をすることがまずは大切です。

どんな人が免除制度または学生納付特例を使うべき?

  • 収入が一時的に減ってしまった人(失業・転職)
  • 教育費や住宅ローンで家計が厳しい40代
  • アルバイトや非正規雇用で安定収入がない人
  • 病気やケガで働けない期間がある人(障害年金受給中は保険料が免除)
  • 過去に審査を受けたが通らなかったが引き続き収入が少ない(去年はダメでも今年は通るケースがあります)
  • 出産の予定がある人(産前産後の期間は免除)

制度活用の注意点と賢い使い方

  • 毎年申請を忘れない(自動更新は過信しない)
  • 追納(免除や特例の後払い)計画を立てる(インフレや将来負担増を考慮)
  • 年金額シミュレーションで将来像を把握(国民年金または基礎年金の計算は比較的簡単です)
  • iDeCoやNISAなど別の資産形成も並行(年金制度だけで生活は安定しません将来の資産形成が重要です。)

まとめ ― 批判しつつも制度は味方に

年金制度には「将来どうせもらえないのでは?」という不安や批判の声も少なくありません。
しかし、現行制度の中で自分が使える仕組みを上手に活用することが、将来の生活を守るうえでとても大切です。

  • 「どうせもらえない」と諦めるのではなく、「今できること」を選ぶ姿勢が重要
  • 免除や猶予は、生活が苦しい時期でも年金制度から離脱しないための“保険”
  • 今お金がなくても、制度を上手に利用して「つながり」を保つことが将来の安心につながる
    また、経済的に余裕ができた時に「追納制度」を利用すれば、将来の受給額を増やすことも可能です。

👉 制度や仕組みに参加しないのではなく「制度を味方にする」という視点を持つことが、結局は自分と家族を守る最良の方法となります。

参考リンク

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